新・健康診断の読解マニュアル⑬ ~中性脂肪~

中性脂肪

正常値 50~149mg/dl

まず、「中性脂肪」は、主成分の脂肪酸とグリセリンが結びついたもので、
「グリセリン脂肪酸エステル」とも呼ばれます。
血液中に存在する中性脂肪はほとんどが「トリグリセリド」で、
これはの3つの中で最も複雑な形態のものです。

そのため、トリグリセリドはしばしば「TG」と略されます。

中性脂肪の役割について

中性脂肪は、体内で余った糖(エネルギー)を蓄える役割を果たします。
これは「ラクダのコブ」のようなもので、エネルギーが必要なときに使われる「予備燃料」と考えることができます。
また、中性脂肪は脂溶性のビタミンや栄養素を全身に運ぶ役割も果たします。
このため、中性脂肪が不足すると、免疫力の低下や抜け毛、肌荒れなどの問題が発生する可能性があります。

例えば、健康な成人男性の場合、中性脂肪の理想的な数値は50~149mg/dlです。
しかし、過度に甘い食べ物や脂っこい食事を摂りすぎると、余った糖が中性脂肪として体内に蓄積され、
その結果中性脂肪の値が上昇します。これは肥満や動脈硬化、心疾患のリスクを増加させるため、注意が必要です。

一方で、中性脂肪を過度に減らすと、
脂溶性のビタミンや栄養素を全身に運ぶことが難しくなり、
健康を損なう可能性があります。

このような状況を避けるためには、
バランスの良い食事と適度な運動が重要となります。
これにより、体内の糖の取り込みを適切にコントロールし、
中性脂肪の適切なバランスを維持することができます。

根拠となる文献

1. 高木幸一 (2007) “中性脂肪とは何か 何故増えるのか” メジカルフレンド社
この本では、中性脂肪の生理学的役割や増加する原因について詳しく解説されています。

2. 西村義明, 渡邊孝 (2016) “血液中の脂質:コレステロールと中性脂肪” 心臓 48(2): 129-133.
この文献では、血液中の脂質の種類とその役割について説明されています。

3. 井上光太郎 (2019) “中性脂肪過多症” プラクティス 糖尿病・代謝・内分泌 36(1): 63-68.
この文献では、中性脂肪過多症の病態や治療について詳しく解説されています。

 

1. Berg JM, Tymoczko JL, Gatto GJ (2015) “Biochemistry” 7th edition. W. H. Freeman and Company.
この教科書では、脂質の生化学的な側面、特にトリグリセライドやコレステロールの生体内での役割について説明されています。

2. Brunzell JD (2007) “Clinical Practice. Hypertriglyceridemia” New England Journal of Medicine. 357(10): 1009–1017.
この文献では、高トリグリセライド血症の臨床的側面について詳しく解説されています。

3. Stone NJ, Robinson JG, Lichtenstein AH, et al. (2014) “2013 ACC/AHA Guideline on the Treatment of Blood Cholesterol to Reduce Atherosclerotic Cardiovascular Risk in Adults” Journal of the American College of Cardiology. 63(25 Pt B): 2889-2934.
このガイドラインでは、血中コレステロールの管理と動脈硬化性心血管疾患リスクの低減について説明されています。

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